●2000年 6月の企画モノ●

夏が来れば思い出す
湿原の宝石よ永遠に


 さて、以下の説明に当てはまるものは何でしょう。

○○○○○○
Lysichiton camtschatccense var. japonicum

 サトイモ科の多年草。 山地の湿原に生える。 地下茎は太く、横にはい丈夫なひげ根を多数出す。 葉は花が散ったあと花茎の側方に出て大型の長楕円〜長楕円状披針形、全縁で葉柄は長く淡緑色。 花は 5〜7月に、雪が溶けた直後に花茎の上部に 1個の円柱形の肉穂花序をなして多数つく。 花序全体が白色の大型の苞で包まれる。 花は淡緑色で花被 4枚、雄ずい 4本、雌ずい 1本。 果実は液果で花軸が埋まり、中に 2個の種子がある。 本州中部以北の日本、サハリン、シベリア東部、千島、カムチャッカの寒〜温帯に分布。

「ブリタニカ国際大百科事典」より

 「湿原」「雪が溶けた直後」「白色の大型の苞」あたりがヒント。 ♪夏が来れば思い出す〜 といえばもうすっかりおなじみ、答えはミズバショウ(水芭蕉)でありました。 上のヒントだけではちょっと難しかったかな。

クリックすると拡大されます。 <形態> 白い大きな花びらが1枚、その中に隠れるようにして雌しべが1本、くらいをみなさん思い浮かべるんじゃないかと思う。 じゃ雄しべはどこにあんのさ。 実は両方とも間違い。

 白い花びら?に見えるものは花びらではなく、仏炎苞(ぶつえんほう)と呼ばれるもの。 葉が変形してできたものである。 その名の通り、仏サマの背後で燃えさかっている炎のような形をしている。 寒冷地に生息するため、防寒フードの役割を果たしているのであろう。

クリックすると拡大されます。  雌しべ…はやはり雌しべではなく、肉穂花序(にくすいかじょ)と呼ばれる部分で、その表面に小さな花が多数ついている。 仏炎苞が開いてしばらくの間は雌しべだけが露出しており、やがて雄しべが顔を出すと雌しべは枯れてしまうという「雌性先熟」の性質を持っている。

 花が咲き終わったあとはいよいよ本格的に葉を広げはじめる。 大きな株は 1m 近い大きな葉を広げることもある。 ちなみに花の時期は 4月頃、尾瀬などは気候の関係で 6月初旬である。

クリックすると拡大されます。 <分布> 国内では湿原に生育する。 年間平均気温が 10℃以下の地域に限られるので、北緯 36度以上の湿原に限られるということになる。 国外ではロシア、アメリカなど。 カムチャッカ半島のものは黄色い仏炎苞をつける。

 アメリカでは主に北アメリカ西岸に分布し、Western Skunk Cabbage と呼ばれる(ザゼンソウの Eastern〜 に対して)。 「アメリカミズバショウ」と呼んで区別するのだが、こちらはひどい悪臭を放つのでロクな名前がついていない。 ちなみにこれも黄色い仏炎苞をつける。

クリックすると拡大されます。 <利用法など> こんなにも魅力的なミズバショウ、何とかして他に利用できないものか、と考えてはみるのだが。

 ∴)なーんにも利用できません。

クリックすると拡大されます。 <尾瀬へのアクセス>

 いろいろな手段があるのですが、一部ではマイカー規制を行っています。 環境保全の立場からすれば当然でしょう。 なので、最寄りの駅からバスでアクセスすることをお勧めします。

大清水 : JR沼田駅・JR上毛高原駅でバスに乗り換え
鳩待峠 : 同上、途中「戸倉」で鳩待峠行きに乗り換え
沼山峠 : 東武鉄道→野岩鉄道(直通列車あり)、会津高原駅でバスに乗り換え

クリックすると拡大されます。 <「夏の思い出」を歌ってみよう>

作詞:江間章子 作曲:中田喜直

1. 
夏が来れば思い出す はるかな尾瀬遠い空
霧の中に浮かびくる やさしい影野の小道
みずばしょうの花が咲いている 夢みて咲いている水のほとり
しゃくなげ色にたそがれる はるかな尾瀬遠い空

2. 
夏が来れば思い出す はるかな尾瀬野の旅よ
花の中にそよそよと ゆれゆれる浮島よ
みずばしょうの花が匂っている 夢みて匂っている水のほとり
まなこつぶればなつかしい はるかな尾瀬遠い空


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